産後ママのための心と体ケア体操

産後ママの腱鞘炎対策:痛みのメカニズムから具体的な運動療法、医療機関受診の目安まで

Tags: 産後ケア, 腱鞘炎, 手首の痛み, 運動療法, セルフケア, ドケルバン病, ばね指

産後、赤ちゃんのお世話に追われる中で、手首や指に痛みを感じることは珍しくありません。特に、抱っこや授乳、おむつ交換といった日常的な動作が原因で発症しやすいのが「腱鞘炎」です。この記事では、産後ママ特有の腱鞘炎のメカニズムから、ご自身でできる効果的な対策、そして専門機関を受診するタイミングについて詳しく解説いたします。

産後ママの腱鞘炎:そのメカニズムと主な種類

腱鞘炎は、筋肉と骨をつなぐ「腱」とその腱が滑らかに動くように保護する「腱鞘」との間で摩擦が起き、炎症を生じる状態を指します。産後ママに腱鞘炎が多いのは、主に以下の要因が複合的に影響するためと考えられています。

産後ママに多く見られる腱鞘炎としては、主に以下の2種類が挙げられます。

腱鞘炎の予防と軽減のためのセルフケア

腱鞘炎の症状を和らげ、悪化を防ぐためには、日常生活での工夫と適切な運動療法が重要です。

1. 日常生活での工夫と姿勢の見直し

2. 効果的な運動療法とストレッチ

腱鞘炎の症状が急性期(強い痛みや腫れがある時期)を過ぎ、痛みが落ち着いてきたら、腱や腱鞘への負担を軽減するための運動療法を取り入れることが推奨されます。ただし、痛みが悪化する場合はすぐに中止し、専門家にご相談ください。

a. 手首・指のストレッチ

  1. 手首の屈曲・伸展ストレッチ:

    • 片腕を前に伸ばし、手のひらを上向きにします。
    • もう片方の手で、伸ばした手の指を掴み、ゆっくりと手前(体側)に引き寄せます。手首の甲側が伸びるのを感じたら、20秒程度キープします。
    • 次に、伸ばした手のひらを下向きにし、もう片方の手で手の甲を掴み、ゆっくりと手前(体側)に引き寄せます。手首のひら側が伸びるのを感じたら、20秒程度キープします。
    • これを左右それぞれ2~3セット繰り返します。
  2. 親指の付け根のストレッチ(ドケルバン病対策):

    • 手のひらを上向きにし、親指を手のひらの内側に倒して軽く握りこみます。
    • ゆっくりと手首を小指側に倒し、親指の付け根が伸びるのを感じたら、20秒程度キープします。無理に力を入れず、心地よい伸びを感じる程度に留めます。
    • これを左右それぞれ2~3セット繰り返します。

b. 手首・指の筋力強化(軽負荷)

  1. タオルギャザー:

    • 椅子に座り、床に広げたタオルを足の指でたぐり寄せる要領で、手の指でたぐり寄せます。
    • 指の関節を意識しながら、ゆっくりとタオルを握り込むようにして引き寄せます。
    • これは指の内在筋を鍛え、安定性を高めるのに役立ちます。
  2. セラバンドやハンドグリップでの運動:

    • 弱い負荷のセラバンド(ゴムバンド)やハンドグリップを使い、手首の屈曲・伸展、指の握り込み・開く動作をゆっくりと行います。
    • 10~15回を1セットとし、2~3セットを目安に行いますが、痛みを感じない範囲で実施することが最も重要です。

3. 肩甲骨周りのケアと姿勢改善

手首や指の痛みは、肩や首の緊張、さらには全身の姿勢の歪みから来ていることもあります。肩甲骨周りのストレッチや、背筋を伸ばす意識を持つことで、腕全体の負担を軽減し、腱鞘炎の予防にも繋がります。

専門機関の受診を検討するタイミング

セルフケアを行っても症状が改善しない場合や、以下のような症状が見られる場合は、迷わず専門医の診察を受けることを強く推奨します。

整形外科を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。医師は、装具療法、薬物療法(内服薬や湿布)、ステロイド注射、症状によっては手術を検討することもあります。また、理学療法士による専門的なリハビリテーション指導も有効な選択肢となります。

まとめ

産後の腱鞘炎は、多くのママが経験するつらい症状ですが、原因を理解し、適切なセルフケアと早期の専門的介入によって改善が期待できます。ご自身の身体と向き合い、無理のない範囲で対策を講じながら、痛みを我慢せずに専門家のサポートを求めることが、心身ともに健やかな育児を送るための大切な一歩となります。ご自身の身体を大切に労りながら、快適な毎日を過ごしてください。